三大財閥不動産を比較
- 三大財閥不動産は超優良不動産の大家さん的な存在で、インフレヘッジという意味でも投資対象として魅力的だと考えています。そんな三社について業績と経営計画を比較していきたいと思います。なお、現時点で投資対象としての魅力を評価すると、住友が1位、三菱が2位、三井が3位と考えています。
2017→2021年度のROE(%)
- 最も高いのは住友なのですが、徐々に低下しています。住友は三菱や三井と比べ、数年前まで自己資本比率がかなり低かったのですが、直近は三菱や三井とほぼ同じ水準となっています。このため、今後はROAの格差がROEの格差に直結するのではないかと考えています。その点、売上高で業界トップの三井はやや手を広げ過ぎている印象があり、ROEやROAなど効率面が少し犠牲になっているという印象です。
住友 11.3 → 11.2 → 11.3 → 10.1 → 9.6三菱 7.3 → 7.8 → 8.5 → 7.6 → 8.1三井 7.4 → 7.4 → 7.7 → 5.2 → 6.6
2017→2021年度のEPS(円)
- 3社とも少しずつ成長しており、2017→2021での成長率が最も高いのは三菱の35%です。4年で35%成長であれば年率換算で8%の成長率となります。業績が安定しており、かつこの成長率であればかなり魅力的な投資先だと思います。
住友 252 → 274 → 297 → 298 → 317 成長率+26%三菱 86 → 96 → 108 → 101 → 116 成長率+35%三井 157 → 171 → 188 → 134 → 184 成長率+17%
2017→2021年度のBPS(円)
- ROEが高いことや、配当性向が低いことで住友の成長率が高くなっています。
住友 2352 → 2536 → 2732 → 3171 → 3447 成長率+47%三菱 1223 → 1275 → 1295 → 1383 → 1514 成長率+24%三井 2231 → 2384 → 2480 → 2656 → 2942 成長率+32%
賃貸不動産の含み益をどう考えるか
- 3社はいずれもオフィスビルなどの賃貸不動産を大量に保有しており、不動産の値上がりにより兆単位の含み益を抱えています。含み益の規模は住友と三菱で純資産の2倍程度、三井は純資産と同程度となっており、近年は毎年増加しています。
- 含み益なのでそもそも売却できる物件なのかという点や売却時には課税される点に注意が必要ではあるものの、含み益をBPSに織り込めばBPSが、含み益の増減をEPSに織り込めばEPSが大きく増加することになりますので、三大財閥不動産の中でも、巨額の含み益を抱えている住友と三菱が魅力的に見えます。
純資産(兆円)住友 1.1 → 1.2 → 1.2 → 1.5 → 1.6三菱 1.8 → 1.9 → 1.9 → 2.0 → 2.2三井 2.2 → 2.4 → 2.4 → 2.6 → 2.9賃貸不動産の含み益(兆円)住友 2.3 → 2.7 → 3.1 → 3.4 → 3.5
三菱 3.3 → 3.5 → 3.8 → 3.9 → 4.2三井 2.5 → 2.7 → 2.9 → 2.8 → 3.0
住友不動産の経営計画
- 財閥の膨大な資産を継承した三井不動産や三菱地所とは対照的に、住友不動産はほとんど資産を受け継ぐことなく創業し、再開発などにより用地を取得しつつ成長してきた会社です。そんな歴史が影響してか経営計画においても規模の成長を重視しており、2030年度に経常利益3000億円を目標としています。
- 配当性向は10%程度しかなく控えめですが、減配はせず徐々に増配しています。三菱や三井に追いつくために規模を大きくすることが住友の経営方針と理解しており、近い将来大幅な増配をしてくれるとは思えませんが、保有する賃貸不動産が拡充するにつれて株価上昇という形でリターンを得られるのではないかと期待しています。
三菱地所の経営計画
- ROA5%、ROE10%、EPS200円を2030年度目標としています。株主として関心が高いROEとEPSを計画の中心に据え置ており、投資対象として安心感があります。
- 配当性向30%で固定しており、EPS成長に沿った増配が期待できます。また、不定期ですが自社株買いも実施しています。住友と比べると、規模の追求ではなくEPSなど一株当たりの価値に軸足を置いた経営をしている印象があります。大幅な増配は期待できないものの、配当性向30%で固定しつつ、EPS成長に伴った増配・・というシナリオを想定しています。
三井不動産の経営計画
- 2018年に発表された経営計画では、2025年度に営業利益3500億円とROA目標しか設定されておらず、株主として関心が高いEPSやROE目標が設定されていない状態でした。
- 一方、直近の決算発表資料では、ROE・EPS・D/Eレシオの目標値が追加されています。ROAとROEが決まればD/Eレシオも定まるので、D/Eレシオは定めなくても良いのではと思えます。やや総花的かつ急ごしらえという印象を受けました。
- 邪推ですが、三菱がROEやEPSを盛り込んだ経営計画を発表したので、三井も追随せざるを得なくなった・・ということなのですかね。三井が本気で取り組んでいるのか、三菱に追随して一応やっていますということなのかの見極めが必要かなと考えています。