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日銀も決算を公表している
- 年末休みで暇を持て余しすぎて日銀のホームページを見ていると、決算資料が掲載されていることに気づきました。一般企業のように投資家向けのプレゼンテーション資料まで掲載されているわけではありませんが、バランスシートが詳細に公開されています。
- そこで、日銀の2018年9月末決算の中から気になった点をまとめてみました。
日銀は意外とリスク資産に投資している
- 2018年9月末の日銀のバランスシートを見ると、資産545兆円、負債451兆円、純資産4兆円という構成になっています。
- 資産の内訳は、国債が462兆円、貸出金が46兆円、指数連動型上場投資信託受益権(株式ETFのこと)が21兆円などとなっています。一方、負債の内訳は、預金が418兆円、発行銀行券が104兆円などとなっています。純資産4兆円に対して、価格変動リスクの高い株式ETF21兆円はかなり大胆なリスクテイクだと感じました。
- ちなみに、決算資料には「円貨建債券(中略)の評価は、移動平均法による償却原価法」「指数連動型上場投資信託受益権(中略)は、移動 平均法による原価法」と記載があります。これは、ざっくり言うと、日銀は保有している国債や株式ETFを時価評価していないため、国債や株式ETFの含み損益は、日銀のバランスシートに計上されていません。
日銀の国債を時価評価すると
- 価額462兆円に対して、時価469兆円となっており、バランスシートに計上されていない含み益が7兆円あります。これは、日銀が購入した際よりも金利が低下し国債が値上がりしたことを意味しています。
- 足元、長期国債の金利は低位安定していますが、これは、日銀が政府の発行を上回るペースで長期国債を購入しているためです。日銀は債券取引損失引当金3兆円を計上して金利上昇に備えていますが、日銀が保有している国債(時価469兆円)の平均デュレーションが10年と仮定すると、長期金利が0.1%point上昇しただけで、時価は4兆円ほど減少すると概算できます。
- 将来、日銀が長期国債の購入をやめたときに民間投資家(銀行や保険会社)が現在の超低金利水準の国債を積極的に購入せず、量的緩和前の水準まで長期金利が上昇(1~2%point)すると、日銀が40兆円~80兆円もの含み損を抱えるリスクがあると推測できます。
日銀の株式ETFを時価評価すると
- 価額21兆円に対して、時価28兆円となっており、バランスシートに計上されていない含み益が7兆円あります。
- 9月末の日経平均は24,120円でしたから、日銀が9月末以降に株式ETFを高値で追加購入していないと楽観的な仮定をしても、日経平均が18,000円(=24,120円×21兆円÷28兆円)を下回ると日銀は含み損を抱えてしまうと概算できます。
- リーマンショックの時のように、仮に日経平均が10,000円まで下落すると、日銀は14兆円(=21兆円×(24,120円-10,000円)÷24,120円)もの含み損を抱えるリスクがあります。
本当に深刻なのは長期金利の上昇リスクだが、当面懸念されるのは株価下落リスク
- 日銀のバランスシートを見ると、日銀は、二つのリスク(長期金利の上昇リスクと株価下落リスク)を抱えている事が分かります。
- 金額としてより大きなリスクは長期金利の上昇リスクですが、現状、日銀は長期国債の大部分を購入して長期水準の水準をコントロールできています。このため、長期金利が日銀の意図に反して上昇しそうな場合は、保有する国債の含み損発生を回避するために長期国債の買い入れを行い、長期金利の上昇を回避できると考えられます。ただしその場合、日本銀行が財政ファイナンスを行っていることが明白になりますので、日本円の下落(円安)という形で影響が生じると予想しています。
- 一方、株価下落リスクについては、9月末から12月下旬にかけて、日銀が株式ETFの購入を続けているにもかかわらず日経平均が4,000円ほど下落したことからも想像できますが、日銀が株式の大部分を購入して株価をコントロールすることは困難と考えらます。このため、当面は、株価下落リスクが日銀の財務に悪影響を及ぼすことがないかに注目していきたいです。